債務名義とは
債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のこと。
強制執行は、他人の財産を強制的に処分することなので、強制執行をすることができることを示した公的な証明書である「債務名義」がなければできない。
債務名義には、裁判所がつくるものとして、判決、和解調書、調停調書、支払督促などがある。
その他、公証人がつくる公正証書(但し、お金の支払いを約束した契約で約束違反をしたときには強制執行を受けてもよいということを書いたものに限る)がある。
債務名義として認められる文書は民事執行法22条で定められている。
(債務名義)
第二十二条強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
一 確定判決
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
四 仮執行の宣言を付した支払督促
四の二 訴訟費用若しくは和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)
六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決
六の二 確定した執行決定のある仲裁判断
七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)
債務名義1:確定判決
確定判決とは、控訴や上告等の通常の不服申し立て方法では取り消したり変更することができない状態になった判決。
例えば、「○○○万円を支払え」などと命じている判決で、上級の裁判所によって取り消される余地のなくなったものをいう。
債務名義2:和解調書
訴訟の途中で話合いをして紛争を解決することを和解といい、和解をすると、裁判所書記官がその内容を記載した和解調書を作る。
和解調書の効力は、確定した判決と同じであり、和解に対して後から不服を唱えることは、原則としてできない。
和解で解決した紛争を再び訴訟で争うことも原則としてできない。
また、もし一方が和解で約束した行為をしない場合には、もう一方は、和解の内容を実現するため、裁判所に対して強制執行の申立をすることができる。
債務名義3:調停調書
民事調停又は家事調停において、話し合いがまとまり、当事者の合意が成立すると、裁判所書記官がその内容を記載した調停調書を作る。
調停調書の効力は、確定した判決と同じであり、原則として、後から不服を唱えることはできない。
この調書において、一定の行為をすることを約束した場合には、当事者はこれを守る必要がある。
もし、一方がその約束した行為をしない場合には、もう一方は、調停の内容を実現するため、裁判所に対して強制執行の申立をすることができる。
債務名義についての関連記事
「債務名義」に関連する記事は以下の通り。