偽装質屋とは
闇金の手口の一つに、質屋を装う「偽装質屋」という新たな形態が現れるようになりました。
偽装質屋とは、質屋を装い、担保価値のない物品を質草として質入れさせた上で、違法な高金利で金銭を貸し付け、年金などから返済させようとする業者のことです。
また、偽装質屋とはいえ、公安委員会の質屋の許可を得ている場合もあるので、表向きだけでは、その実体を見分けることは難しくなっています。
本来、質屋は、質草相応のお金しか貸しません。
そして、質草は、期限内に元金と利息を返せば返還してもらえます。
元利金の返済ができない場合には質草は処分されてしまいますが、債務も無くなるという仕組みなのです。
偽装質屋の本質は闇金
偽装質屋は、
- 壊れた時計
- 使い古しの財布
など、普通なら無価値と思われるようなゴミ同然のものを質草として入れさせることで、質屋としての外観をとりながらも、本質は闇金です。
形だけの質草を取っているにもかかわらず、質草に見合わない高額のお金を貸してくれますが、金利は高金利となっています。
そして、元利金を滞納しても、質草は質流れとせずに、銀行口座からの自動引き落としを続けて、貸付金を回収するのです。
なぜ質屋を装うのか
闇金が、質屋を偽装しようと目をつけた理由は、「利息制限法」と「出資法」、そして「質屋営業法」で認められた金利の差にあります。
闇金として貸金業を営むよりも、偽装して質屋を営む方が、高利をむさぼることができると考えたのでしょう。
以前の上限金利
貸金業法は、消費者金融などの貸金業者の業務等について定めている法律ですが、この法律は、平成18年12月に、国会で全会一致で可決・成立し、平成22年6月18日に、完全施行されました。
出資法と利息制限法で、貸金業者の貸付金利は規制されているのですが、
以前は、
- 出資法の上限金利は29.2%
- 利息制限法の上限金利は最高で20%(貸付金額によって15~20%)
であったために、29.2%と最高20%の間に「グレーゾーン金利」が存在しており、一定の要件を満たせば有効となっていました。
その一定の要件というのが、『旧貸金業法43条所定の要件を満たす場合』であり、
貸金業者が利息制限法所定の制限利率を超える利率の利息を受領したとしても、有効な利息の弁済があったものとみなすというもので、『みなし弁済』という制度だったのです。
みなし弁済が適用されると、本来無効であるはずの制限超過利息の受領が有効となってしまいます。
改正法令後の上限金利
しかし、平成22年(2010年)に改正関係法令が完全施行されましたので、出資法の上限金利が年利20%に引き下げられ、貸金業法のみなし弁済制度も廃止されるに至りました。
そのため、グレーゾーン金利もなくなり、20%以上の金利は無効で、刑事罰にも問われるようになりました。
質屋営業法
一方、質屋営業法では年利109.5%まで認められています。
そのため、質屋として名目上の許可を得れば、質屋の形態で融資業務を行うことができます。
そうすれば、貸付金額によって15%~20%と定められた利息制限法よりも、はるかに高い利息が得られると考えて、「偽装質屋」という悪徳業者が現れたのです。
偽装質屋のターゲット
偽装質屋の被害者のほとんどは高齢者で、60歳以上が70%を占めているというデータがあります。
ポスティング広告やチラシを見て、質屋に連絡をする方が多いようです。
被害者(ターゲットになってしまう人)の多くは、
- 貸金業法の総量規制により、貸金業者やクレジットカード会社から、新たな借り入れができなくなった人
- 高齢者
- 生活保護受給者
- ひとり親世帯
であり、年金や生活保護費、児童扶養手当が狙われます。
年金や生活保護費、児童扶養手当が振り込まれる銀行口座に、自動引き落としを設定して、融資した金額を回収しようとするのです。
銀行口座の通帳やキャッシュカードを偽装質屋が預かって、引き出しをしてしまうという大胆なケースもあります。
偽装質屋の実体は、闇金です。
「質草は何でもいいからもってきて」
などという誘いには乗らないことが大切です。
また、データ上も高齢者が狙われることが多いことがわかっていますので、ご家族に高齢者がおられる方は、日ごろからの声かけで注意を促してあげましょう。
怪しいと思ったら、絶対に利用せず、利用してしまったら、できるだけ早く、闇金問題を得意とする弁護士や司法書士に闇金相談されることをお勧めします。