闇金業者による違法な年金担保貸付
厚生年金や国民年金、労災年金を担保にして融資を受けることができる機関は、独立行政法人福祉医療機構という公的機関からのみです。
また、共済年金や恩給を担保とする融資は、日本政策金融公庫と沖縄振興開発金融公庫が行っています。
これらの機関以外に、公的年金を担保とする合法的な貸し付けをすることは認められていません。
違法年金担保融資対策法
違法な年金担保融資は、10年以上前から社会問題になっていました。
違法な年金担保融資の取り締まりを強化するため、違法年金担保融資対策法が成立し、2004年(平成16年)12月28日より施行されました。
この法律により、貸金業者の次のような行為が禁止されました。
- 広告・勧誘に当たって、年金受給者の借入意欲をそそるような表示または説明を行うこと
- 融資契約において、公的給付(年金や生活保護費など)が振り込まれる口座から融資の返済を受ける目的で、年金受給者の年金証書、公的給付が振り込まれる預金通帳、キャッシュカードの引き渡しもしくは提供を求めたり、保管すること
また同時に、これらに違反した者には罰則が設けられました。
しかし、高齢者の年金を狙った闇金の手口は、今も、後を絶ちません。
「高齢者歓迎」の甘い誘い
闇金業者は、
- 年金立替え
- 高齢者歓迎
- 70歳まで借りられます
- シルバーライフを応援
などを高齢者向け広告として、高齢者の融資希望者を募っています。
生活費にも困っている高齢者にとっては、これらは優しい誘い文句となって、借り入れしてしまうのです。
違法な年金貸付の手口
闇金は、高利で金を貸し付けるばかりでなく、年金の振り込まれる通帳やキャッシュカードを預かったり、年金証書の引き渡しを求めてきます。
そして、預かった通帳から、自由に年金を引き出して、返済金を回収しようとします。
また、合法的な独立行政法人福祉医療機構の年金担保融資を紹介したうえで、紹介料と称したお金を請求する事例もあるようです。
具体的事例
- 高齢者の年金証書などを担保に高金利で金を貸し付け、年金証書などを預かり、自由に年金を引き出せないようにした
- 年金が振り込まれる預金通帳を預かり、これを担保に金を貸し付け、預かった通帳やキャッシュカードを使って、返済金として、自在に現金を引き出していた
- 年金受給者に対して、法定利率以上の高金利で金を貸し付けたうえ、独立行政法人福祉医療機構の合法的な年金担保融資で金を借りさせ、貸付金の返済をさせていた
- 質屋の業務を装って、高金利で金を貸し付け、年金受給口座から自動引き落としで回収していた
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違法な年金担保トラブルの対応策
年金を受ける権利を譲り渡したり、担保に供すること(公的機関の行う年金担保融資を除く)は、厚生年金法や国民年金法などで禁止されています。
公的機関以外からの
という勧誘には乗らないようにすることが、まず、必要です。
被害にあってしまい、通帳やキャッシュカードが担保に取られてしまった場合には、
- 年金受給口座を変更する
- 通帳やキャッシュカードの紛失届を出す
などの手続きを取ると良いでしょう。
年金証書等の返還を求める場合、相手が闇金であることを考えると、自身で対応することは危険なこともありますので、闇金問題に注力している弁護士や司法書士に対応をお願いすると安全です。